アイドル好きの言い訳

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『HiGH&LOW THE WORST』子供の喧嘩の最高峰

以前、RAMPAGEについてブログで書いて以来、ほぼジャニーズの話しかしてきませんでしたが久々に。『HiGH&LOW』シリーズはオタクの必修科目ですよねーという事で、『HiGH&LOW THE WORST』を観てきました。実はそれほど期待してなかったんですよね、ザム3から2年ぶりでちょっとハイローの事忘れちゃってたみたいなところもあったし。でも推しの壱馬が主演だし、『クローズ』と『WORST』とのコラボって事でヤンキーマンガ好きとしては無視できない…!という事で観に行ったらめっちゃ楽しかった!最高でした。一気に色んな事を思い出しました。あーこれこれ!みたいな。不思議なんですけど、ハイローのあの感じってハイローでしか味わえないんですよね。そしてやはり喧嘩の基本は肉弾戦だなと。ナイフとか銃とかバイクとかトラックとか、よくわかんない武器とか爆発に次ぐ爆発もいいんだけど、シンプルな殴り合いの爽快感たるや。というわけでめちゃくちゃネタバレします。そして長いです。

まずハイローらしからぬ適度に地に足がついた世界観が好きでした。喧嘩シーンもシンプルでわかりやすく高校生同士の喧嘩感が全面に出てて良かったし、コメディとシリアスのバランスも絶妙でした。ハイローはディティールがやたら凝りまくってるので妙な説得力というか謎のリアリティはあるんだけど、とにかくスケールがでかいみたいな価値観で成立しているファンタジーというか、別の世界線の日本の話かな?ぐらいに捉えてたので、いくら喧嘩やヤンキーっていう共通ルールがあるにしても、『クローズ / WORST』みたいな、全然違う世界観を構築している別作品と混ぜて大丈夫なのかと思いました。同じフィクションでもファンタジーヤクザの抗争と厳い高校生の喧嘩って全然価値観もルールも違うから、お互いの世界観を壊し合わないのかなーと。でもSWORDの中でも一番未熟なチームである鬼邪高の全日を舞台に選んだ事と、ずっとハイローの世界線で生きてきた村山や轟じゃなくて、SWORDの事もよく知らないヤンチャなヤンキーみたいな佇まいの花岡楓士雄を主人公に据えた事で、ハイローの世界観や文脈を活かしつつも、ギリギリまで『クローズ / WORST』の価値観に寄せる事に成功したなと思いました。本作が「ハイローを知らなくても全然問題ない」って言われるのは、ハイローの住人でありながら楓士雄自身はハイローの物語との接点がほぼない(現時点では)からなんだよね。

『クローズ / WORST』とのコラボするために、どうしても全体的にスケールダウンせざるを得なかったと思うんですよね。だってザワは完全に子供の喧嘩で、今までのハイローとは強さの基準がだいぶ違うし。鳳仙が鬼邪高に対して「定時が出てきたら高校生には勝ち目がない」ってハッキリ言ってたのもその通りだし、高橋ヒロシもコラボするに当たり「(ヤクザ予備軍の)定時がいる世界観に鳳仙は出せない」って断言してて、ですよねって思ったし。それに物語のメインは明らかに鬼邪高対鳳仙だから、雑魚感が否めないキドラがラスボスなのも、鬼邪高と鳳仙の共闘が勝つっていうわかりきった展開になってしまうのも、基本は“高校生の喧嘩”のラインを超えたくなかったんだろうなーと。九龍は置いといても、MIGHTYやDOUBTみたいな強くて魅力的なチームが出せるのは、SWORDが共闘して戦う前提だから成立する事であって、高校生相手にガチ喧嘩する大人が魅力的な悪役になるわけないんだもん。でもアクションシーンだけは過去シリーズに全く引けを取らないクオリティで、冒頭の村山対轟、鬼邪高対鳳仙の河川敷の大乱闘、絶望団地の共闘と、物語のスケールを小さくした分を取り返すかのような完成度の高さで。私はザムが回を重ねるごとに規模がでかくなって、その分設定の粗が見えてしまってちょっと萎えた側の人間なので、今回パワーインフレに逆らった事に好感が持てたし、興味深かったです。それに全日(未成年)と定時(成人)を対比的に使った事したことで、ハイローが常に訴え続けている成長とは何かとか、大人になる事の意味とはみたいなものが分かりやすく描かれてたなと思いました。

で、それぞれの作品の繋ぎ、引いては村山や轟、鳳仙といったキャラを繋ぐという重要な役割を担っていたのが、本作の主人公(実質)にあたる楓士雄。彼、めちゃくちゃ王道な少年マンガの主人公じゃないですか。明るくてポジティブで人を惹き付ける存在感があって完全に陽の子で、少年マンガの中でも特にジャンプ主人公の何考えてるか分からん悟空・ルフィタイプですよね。強い奴にワクワクする感じとか、年上年下問わず相手の懐に入るのが上手いナチュラルボーン人たらしなとことか、お前の問題は俺の問題って言えちゃう自分勝手さとか、でも変にプライド高くないところとか、いい意味でも悪い意味でも無責任で無垢。鬼邪高の事も定時と全日の関係も、もちろんSWORDの事もよくわかってない楓士雄がポンッと放り込まれて、無邪気に色んな人に色んな影響を与えて巻き込んでいくのは、もはや爽快感すらあって。幼馴染の中でも一足先に社会の厳しさに身を置いてるオロチ兄弟と現実の残酷さを知ってしまった新太、将来を見据えて自分に出来る事をしっかりやっている誠司やマドカがいる中、圧倒的に子供なのが楓士雄。多分楓士雄の子供っぽさはかなり意図的に描いてると思うんですけど、でも子供故の未完成さと無敵感みたいなものって未来とか可能性を感じさせるので、まさにハイローのこれからを象徴するような存在だなと思いました。

そういうメタ的な役割をさておいても、楓士雄はすごく魅力的なキャラだったと思う。脚本に高橋ヒロシが関わってるので、鳳仙はもちろんの事、鬼邪高全日の新キャラは『クローズ / WORST』のルールで生まれたキャラだと思うんだけど、ヤンキーマンガって何よりキャラクターが大事なのでやっぱり作り込み方がエグいというか、何かのインタビューで高橋ヒロシが「村山に負けない魅力的なキャラクターを作りたかった」って答えてて、そら楓士雄たちや鳳仙がいいキャラになるはずだわと。リーダー論みたいなのはハイローの根底にあるテーマだと思うんだけど、根拠はないけど俺は勝つ!みたいな、底抜けなポジティブさで周りを引っ張るみたいなリーダーって今までのハイローにはいなかったじゃないですか。楓士雄は馬鹿だけどちゃんと気持ちを言葉にできるし、本当にすくすく素直に曲がって育ったんだってよく分かる。ハイローは基本的に過去エピ爆盛りの訳ありポエミーリーダーばかりだから(村山ですらドラマ初登場時はアンニュイだもの)、陰も陽に変えちゃうというか終始明るくて闇落ちしそうもないカラッとしたキャラは新鮮でした。楓士雄には変わらずいてほしい…みんなだんだん暗くなってくから…楓士雄がポエム言い始めたら泣く。大体みんな復讐で闇落ちするので、司とか幼馴染あたりが変な目に合いませんように…。

今回、新キャラを主人公にした事自体、かなりのチャレンジだったと思うんですよね。これでもかってぐらい個性の強いキャラが大集合してる作品で、それを残したまま新キャラを投入にするのは普通に考えても相当難易度が高い。しかも村山率いる鬼邪高スピンオフって…そのハードルどんだけ高いと思ってんのかと。壱馬本人も言ってたけど「なんで村山が主役じゃないの?」ってハイロー観てた層は絶対に思ってしまうし、実際に言われただろうなと思うし。私はハイローも好きだけどLDHの中ではランペに対する思い入れが圧倒的に強いので、壱馬が鬼邪高生として主人公をやる事については楽しみと同時に不安も大きかったし、壱馬が主演のハイローがつまらなかったら結構落ち込んだろうなって思うんですよ。けどそんな心配や不安は完全なる杞憂でした。プリレジェの時も驚かされたけど、壱馬がこんなに自然にキャラクターになれる人だと思ってなかったし、計算なのかナチュラルなのか分かんないけど、ちょっとしたリアクションとか表情とかも全て楓士雄として存在できてるのがすごい。まだ壱馬の演技をそんなに色々見てないからなんとも言えないけど、山田くんも志尊くんも前田くんも壱馬の演技を絶賛してくれてたし(推しが褒められてご機嫌なオタク)。まあとにかく、楓士雄のキャラが完璧だった事に加えて、壱馬の演技が見事にハマってて馬鹿高いハードルを乗り越えてくれた事に本当に感動しました。でも番宣で全然喋れてないのはマジで心配してたよ。

もう1人の主人公は轟洋介ですよね。轟の成長というか変化もかなり大きなテーマでした。轟は別に鬼邪高で人を率いたいわけでもなく、馬鹿と群れる気なんて1ミリもなくて、ただ自分の正義を貫きたい人だと思ってるんだけど、まさに自分にはないものを持ってる村山と出会って、憧れのような嫉妬のような消化できない感情でいっぱいになって。だから轟は村山に対してだけはどうしても冷静ではいられなくて、村山に勝つ事にしか興味を持てなくて、そんな時に楓士雄が現れる。泰清一派や中中一派はもちろん芝マンや辻まで楓士雄に夢中で、本来轟は楓士雄みたいなタイプ絶対苦手だと思うんだけど、でも轟が嫌いな偉そうなヤンキーともちょっと違う。そして当の楓士雄は飄々と距離を縮めてくる。気づけば心を開いてたっていうのも、楓士雄の子供っぽさがうまく作用してるのかもしれないな(まあメタ的には楓士雄の魅力を表現するために必要な描写なんだろうなとも思うんですが)。彼らには喧嘩の強さっていう絶対的に揺るぎない価値観があるから、きっかけが何であれ、楓士雄のどんな強い相手にも怯まず何なら楽しんでしまえる強さや、鳳仙との戦い振りを評価したから、最後はもはや轟とは何の関係もない楓士雄の友達を救うミッションに自ら加わっていくというね。はー青春映画だわー。

そして今回のライバル、鳳仙高校がクソかっこいい。まず上田佐智雄役の志尊淳くん。正直あんま知らなかったというか、もちろんお名前は知ってましたけどちゃんと見た事なくて、それこそハイローみたいな世界観とは無縁の人なイメージだったから、オリジナルキャラとはいえ鳳仙学園の頭をやるって知って「えー!」ってなったし、動いている所…いや映画を観るまで大丈夫かな?と半信半疑でした。ところがまあこのオーラが半端なかった…。鳳仙は全体的にビジュアルの作り込みが素晴らしいのだけど、見た目だけじゃなく、強くて優しくて頭が良くて冷静でストイックで責任感もあり仲間思いっていう、リーダーに必要な資質全部乗せ!みたいなキャラなのに、志尊くんがそれを全部受け止めて表現しているっていう。華奢な身体やちょっと高めの声すら強さの裏返しみたいに感じる。また四天王やスキンヘッド軍団達全員で佐智雄のオーラを表現する事に全力なのが最高でしたね。これ楓士雄も一緒で、楓士雄を主人公足らしめているのは、キャラの良さや演技力が大前提にあるとして、楓士雄の周りにいる幼馴染、司やジャム男、泰清、中中、轟というキャラたちがどう楓士雄を接するかによって、存在感や見え方っていうのがより立体感を持って伝わってくるわけで、佐智雄もまさにそう。それを中の人達が積極的にやってたっていうのがまた…鳳仙尊いかよと。あと佐智雄のほうが楓士雄よりハイローの住人感あるのも面白いなと思いました。

もちろん四天王も最高でした。特に公開前からオタクを片っ端から落としていった小田島有剣。金髪ハーフアップ、チェーン付きのグラサン、タンクトップに襟抜きカーディガン、筋肉なさそうな姿勢、気だるい佇まいとキャラもビジュアルも存在感も何もかも二次元からそのまま飛び出してきた感がすごすぎて、もはや作画、高橋ヒロシじゃなくて中村明日美子じゃん。原作があるわけでもないのに、細かいセリフから動作から表情から何から何までキャラとしてのクオリティ高すぎて笑ってしまいますね。私もまんまと喰らいまして、1回目はとにかく壱馬を観てたんですけど、2回目から「え、あの金髪メガネ何…?」ってなってもっかい観なきゃってなり、気づけばずぶずぶと。今までハイローでは特に推しキャラってなかったんだけど、小田島有剣がザワの中にしか存在しないと思ったら何故か尊さが爆発して、彼が三次元に存在しない事に寂しさすら覚えました。だって二次元はモニターに映ってる時しか存在しないけど、三次元は24時間365日存在してるんだもん。これが2.5次元というやつなのか(多分違う)。三次元で動いてる小田島有剣を生で見たいんですけど…どこにいますか…誰にいくら払えば会えるんや…。って何を言ってるんだ私は。

そして楓士雄と幼馴染、鬼邪高と鳳仙の戦いと並列して描かれたのが、村山の鬼邪高卒業。今回かなり丁寧に村山の迷いや葛藤、未練を断ち切って次に進む覚悟をするところまで描いてたなと思うけど、でも村山はコブラと戦って仲間の意味を知ったときから次のステージ(鬼邪高の外)に気持ちが向いてしまってもいて、最初から結論は出てたと思うんですよ。私は鬼邪高を“高校”という認識ではなく、SWORDの一つの“チーム”っていう認識でハイローシリーズを観てきたし、ザワを観てやっぱりその認識は間違ってなかったなと思ったので、彼の言う“卒業”も言葉通りに高校を中退するという意味は薄いと思うし、古屋や関ちゃんが一緒な時点でチームを抜けるってニュアンスとも違うと思う。それよりは関パパが言ってた通り大人になる事を選んだんだと(もしくはメタ的な意味で作品からの卒業)。『クローズ / WORST』とのコラボをする上で全日にスポットを当てるのは絶対条件だったはずなので、無理にここで定時の村山の卒業を描く必要はなかったのかもしれない。なんかちょっとアドバイスする先輩的な立ち位置でも描けたはず。でもやっぱり村山が活躍しない鬼邪高スピンオフなんてありえないしつまんないもんな。村山と楓士雄のタイマンも観てみたかったというか何もしないまま卒業するのもちょっと逃げな気もしたけど、覚悟が決まっている村山と、何も知らない楓士雄がやりあってもあんまり意味ないし、轟にも鳳仙にも負けてる楓士雄にはそもそも村山とタイマン張る資格がないのも分かるし。でも村山がなかなか気づけなかった仲間の意味を最初からわかってるのも楓士雄で、あの子は村山と轟が抱いた葛藤を既に乗り越えちゃってるので、今までのハイローの性質上、村山と楓士雄がこれ以上ぶつかる必要がないのかもしれないな。

基本的に不満はなかったんですが、できれば楓士雄と司の関係性は、ちょっとでいいから映画でも描いてほしかったです。この映画において楓士雄と司の関係は、幼馴染組と同じぐらい大事にすべきところだったと私は思うんで(メタ的な意味でも。そのための壱馬と北人でしょ)。楓士雄のキャラクターと壱馬の演技の説得力によって、彼の強さや人望、人たらしっぷりがごく僅かなエピソードと会話でわりと伝わっちゃったが故に、楓士雄の横で司がニコニコしてるだけでそれ以上の説明をする必要がなくなっちゃったのもわかるんだけど、ちょっとでもいいから楓士雄と司の関係が見えてくるようなエピソードを描いて欲しかった。『EPISODE.0』は司の「楓士雄がいないとつまんない」を丁寧に描いたドラマだったし2人がやり合うシーンもあるので、その上で映画を観ると多少は見え方も変わるんだけど(でもドラマは熱心なオタクしか観てないだろうしな…)、だからこそ映画でもそこを抜かずに描いて欲しかったし、司から楓士雄への感情はよく分かったから、楓士雄が司をどう評価してるのかが知りたかった。てかそっちのほうが重要な気がするのよね。他のキャラは「楓士雄をどう見てるか」で十分だけど、司に関しては相互じゃなきゃ意味ないっていうか。楓士雄と司の関係を描くことで、楓士雄と鬼邪高全日のほかの一派との信頼関係ももっと説得力を持って観せられた気がするし。まあ今回は、楓士雄が幼馴染の問題を解決する事が物語の本題であって、楓士雄は鬼邪高の頭にもなってないし、鬼邪高と鳳仙の決着もついてないし、もし続編をやれるなら、楓士雄が司と一緒に鬼邪高のトップになる話が観てみたいな。

LDHに関しては音楽単体ではどうにも趣味が合わなくてあんまり聴く機会ないんですけど、ただ『HiGH&LOW』っていう世界観が噛むと途端はちゃめちゃにかっこいー!ってなるから不思議だなって思う。ハイローはLDHじゃなきゃ絶対に作り出せなかった世界観で、要するにジャニーズとかディズニーとか宝塚とかと同じ領域に完全に突入しちゃってるんだけど、それ故にいくら上質のエンターテインメントを作ってても『LDHだし』って言われてしまうのがちょっと悔しいです。少なくともジャニヲタとかドルヲタは観るべきエンタメです。私は舞台とかコンサートとかは何回か観て色々と咀嚼したい系の人なのですが、映画に関してはライブじゃないし…と思ってそんなに回数入ったりもしないんですけど(せいぜい2、3回かな…)、ザワに関しては1週目に5回行ってしまって、しかも毎回面白いし毎回発見があって、まだもっと観に行きたいなと思っているので、多分これ人生で一番観る映画になりそう。おしまい。

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迷ったけどやっぱり鳳仙!