アイドル好きの言い訳

いろんなアイドルの話をしてるだけです。

バーチャルジャニーズの話

「海堂飛鳥(CV:藤原丈一郎)、苺谷星空(CV:大橋和也)の2名がジャニーズ初のバーチャルアイドルとして活動開始。SHOWROOMで生配信をしながらアイドルを目指す」という事で、長い長いネット鎖国を経てちょっとずつ色んなものを解禁させてきたジャニが、突然ジャニオタを置いてきぼりにしながらバーチャルジャニーズという新たなコンテンツを爆誕させました。スタートして20日、未だに2人とも毎日30分ずつ配信を続けています。そこまでしなくてもいいのでは?とこちらが心配になってくるというかなんと言うか…もうなんか凄いとしか言えないわ。それぐらい大きなプロジェクトってことなんだろうけど。

というわけで、賛否両論ありながらスタートしたバーチャルジャニーズでしたが、YouTubeではなかなか既存の人気YouTuberとの差を埋められない状況の中、SHOWROOMのランキング1位2位独占中なわけですから、ひとまずは成功と言えるんじゃないでしょうか(YouTubeSHOWROOMでは規模が違いすぎるので一概に比較するのもアレですが)。発表があった時はさすがに大丈夫なの?ジャニーズどこに行っちゃうの?その前にやることあるよね?と思ったりもしましたが、順応性の高さに定評のある私としましては、普通に楽しんでおります。何なら丈橋への理解が深まってもっと好きになりました。そしてまんまと苺ちゃん≠大橋くんにハマり、なにわ男子は箱推しで担当っていうのを持たずに、まあトリオ寄りのユニ担みたいな感じで行きそうだなと思っていたのに大橋くんの魅力に引きずり込まれそうです……不意打ちにも程がある。まあそれはともかく、ジャニーズの万能性というか凡庸性というか、芸能基礎能力の高さを感じましたね。アイドルフィジカルの強さとでも言いましょうか。なるほど、ジャニーズってこういう人材を育成している事務所なんだなと。VTuber界隈に女性ファンが少ないという問題をジャニーズを使って解決しようとしたってのも納得です。

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二次元もそこそこ摂取してきた立場として思うのは、まずオタクはもう設定だけでも十分そこから具体的な性格や関係性を妄想できる素養があって、近年で言えば刀剣乱舞やヒプマイが分かりやすい例だけど、キャラクターの立ち絵と設定といくつか用意されたセリフだけで、ストーリーやエピソードの供給がほぼなくても大丈夫、あとは二次創作で補完すればよろしい(たまに燃料投下してね)っていう状況がもう10年以上前からあるわけです。だから普通に声優さんが台本をベースにあすかなを演じることも可能だったろうし、それなりに人気を集めただろうと思う(拘束時間を考えると人を選ぶ仕事ではあるけれども)。ではそれをジャニーズの、要するにリアルアイドルがCVだけ担当してやる意味があるのか?というのが、おそらく賛否の争点だったのではと思うんですけど、でも今回の成功には丈橋という存在、ひいてはジャニーズ事務所が培ってきたアイドルのノウハウが欠かせなかっただろうなと思うんです。

48や坂道はオーディションにSRを使うので基本的な知識はあるほうだと思うんですが、なかなか難しいと言うか、かなり人を選ぶツールだないう印象で。例えばニコ生とかYouTubeやLINEの配信みたいに、何かしらのパフォーマンスを見てもらう事を目的としたコンテンツというよりは、ユーザーとコミュニケーションを取る方向に特化したサービスだと思うんですよ。本来はどうだったか知らないですけど。ってなってくるとまずお喋りが上手であること、もしくは沈黙に耐えられるキャラであることは必須だなと。私が見てきたSR配信だとその日にどんなネタ・お話をするのかを考える企画力があり、コメントの取捨選択がうまくて早く、喋りながらコメントを読んで次話す事を考えられるトーク力があり、駄目なコメントを無視できるメンタルの強さ、ファンとの距離感を分かっている人、というのがわりと人気を集める配信者かなと。だから今のJr.でこれができるスキルのあるメンバーって考えると、その時点でなかなかハードル高いと思うので、そこに丈橋を選んだのが事務所なのかSR側なのか分かりませんが、正しかった。とにかくあすかなのキャラと関係性が丈橋のキャラと関係性にマッチしているところが素晴らしかったです。

その上で、私がすごく面白いなとよく出来ているなと思ったのは、ただ相性がよかっただけでなく、丈橋の性格や設定、2人の関係性を、あすかなに活かす余地を与えたことかなと。キャラの性格や関係性について具体的な設定がまだ共有されてない中でSRがスタートして、本人たちも明確な答えのない状態で試行錯誤しながら演じなきゃいけなかったと思うんですが、丈橋のキャラクターに対する解釈だけで演じろってのはかなりの難易度の高い要求だと思うんですよね。リアルタイムでファンとコミュニケーションを取るなんて、絶対にイレギュラーな対応をせざるを得ないし、それを演じながらやるなんて、いきなりエチュードやれって言われてるようなもんで。ちょっとした事でキャラブレや解釈違い、中の人との違和感を起こしかねないわけですよ。でもそのイレギュラーな部分を、丈橋自身の関係性や2人の経験で埋められたところが面白かった。あすかなの設定は中の人の性質を参照にしている部分もあるけどもキャラクターとしては別の存在なのに、2人の関係性とも適度にリンクするし、2人の本来の性格とも適度にリンクするし、むしろリンクする余地を残そうとしたゆえのザル設定だったのかも知れないとすら思いました。

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海堂飛鳥(CV:藤原丈一郎

しかも1週間過ぎた頃には2人ともすっかりキャラに馴染んでて。丈くんは飛鳥役を演じるっていう方向に完全に舵を切りつつ、やる事決めてルーティーンで回すスタイルで、大橋くんは設定に反しない範囲で自分のまま星空役を演じて、内容もフリースタイル。基本的に真面目な丈くんと何事もフリーダムな大橋くんがそのまま反映されてる。それでいて飛鳥と星空の関係性が=丈橋の関係性という事では決してなく、あすかなはあすかなとしての関係をしっかり築いてる。そのへん2人や周りの大人達がどこまで計算してやっているのかは何とも言えないけど、でも「クール系の王子様キャラクター」であるはずの飛鳥がツンデレでちょっと天然だったり、「やんちゃで無邪気な元気っ子」であるはずの星空が、問題発言連発で飛鳥を煽りまくったり、想定していたキャラとちょっと違う方向に向かっていても許されるというか、むしろそうなることを期待してたのかなとも思う。いい具合に丈橋の要素も滲み出てくるから、中の人を知るオタクとしてはメタ的な面白さもあるし、あすかなしか知らない人が観ても違和感のない範囲であすかなと丈橋がリンクしているっていう、その匙加減が素晴らしいなと。だからもし他の人があすかなの中の人をやったら、全く違う飛鳥と星空になってと思うしね。

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苺谷星空(CV:大橋和也

また面白いのが、丈橋もある種丈橋を演じている立場なわけですよ。我々が観ているのは、アイドルとしての藤原丈一郎大橋和也であり、本当の藤原丈一郎大橋和也のことはオタクも知らないわけです。そんなアイドルとしての2人がさらにアイドルを目指すあすかなを演じているっていう2重構造。現実で丈橋が目指している「CDデビュー」と、あすかなの目指すアイドルデビューがリンクして、またオタク頑張るっていうね…出来過ぎかよ。でも丈橋という土壌があったからこそ、あすかなの関係性もより魅力的になったのだと思うし、中の人やジャニーズ自体を知らない人からの反響もあったみたいで、この調子でいつまで出来るのかという疑問は残りますが、企画として、コンテンツとしてはひとまず成功だったのではと思うバーチャルジャニーズでした。

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「あすかな初の同時配信 1時間スペシャル!!」より

ただ個人的に気になるのがこれJr.内のコンテンツでしかないってことなんですよね。「ジャニーズの登竜門を変える一大プロジェクトなのかもしれない」っていうのは、なにわ男子の特集が組まれた日経エンタテインメント!に書いてあった言葉ですが、果たして本当にそうなんだろうかと。YouTubeもそうだし、3月からスタートしたアイランドTVもそうだけど、色々やらせるのはいいけど、この手の仕事…つまりこれまであったデビュー組のバーターや先輩からのお下がりのような仕事とは明らかに違う仕事、が増えたとしても、その先にデビュー(便宜的にこの言葉を使うけど、配信デビューだとかいう誤魔化しじゃなくて、所謂デビュー組と同等の権利を得るって意味ね)があるとはあんまり思えなくて。これはこれ、それはそれみたいな。Jr.としての仕事の一つでしかないというか、Jr.で稼ぎたいんだろうなと。まあJr.本人たちも何をすればデビューできるっていう確約のない中で頑張るしかないんだろうから、オタクとしてはどちらの意味だったとしても応援するし楽しむしかないんですけどね。おしまい。